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scrap’s blog

If you like water, you already like 72% of me.

最近心が荒んでるなーって思う。

時間は忘却の妙薬だけど、劇薬。独りで過剰摂取するのは毒だね。

 

じゃあ今日は、死を書こうと思う。

死を手にとってみたことは、ありますか。

 

ひとつめ。ばあちゃん。

僕の地元は星型の元要塞がある地域だ(山にもある

もともと僕ら家族はばあちゃん家で生活していたのだけど、僕らが大きくなるにつれ狭くなったのかな?程なく数キロ離れたところに引っ越した。

でも僕と弟はばあちゃんが好きだった。

雪が積もっていなければ、たまに自転車を漕いでばあちゃん家まで行っていた。

 

ばあちゃんは基本抜けている。大雑把なんだな。
出かけていても、大抵どこかしら施錠し忘れがあるんだ。
高確率だったのはトイレの窓。次いで木々に阻まれているリビングの窓。

ばあちゃんが留守だったときは隣の空き地で遊んで待ち、それにも飽きたらそういうところから忍び込み、冷蔵庫に常備されていたカリカリ梅を食べて待っていた。
(ばあちゃん特製のプルーンジュースには手を出さない。トラウマ級のまずさ!!)

 

ある日。

少し期間が空いたけど、またばあちゃん家に行きたくなった。

弟にいうと、行くという。
そうと決めたらいざゆかん。
早速自転車にまたがり、ばあちゃん家を目指した。

その日もばあちゃんは不在だった。

いつものように遊び疲れ、家の中に入ろうとあいているところを探したが、その日は珍しく全ての箇所が施錠されていた。

とはいえ、たまにそういうことはあった。
こういうときは諦めざるを得ない。

渋々帰ることにした。

ばあちゃんが亡くなったと聞いたのは、それからわずか2日後だった。

 

突然の心臓発作だったようだ。

ばあちゃんは手近にあったビニール袋を寄せ集め、即席の枕をこしらえて横たわっていたという。

ばあちゃんは少しの体調不良でも、寝て治す人物だった。
襲い来る不調に抗いながら、この時も「少し休めば楽になる」と考えていたに違いない。

 

僕たち兄弟にとってショッキングだったのは、ばあちゃんが死亡したとされる日時が、僕たちが尋ねた日時と被ったことだ。

窓を破って入っていれば。
なんとかして入っていれば。
ばあちゃんは無事だったかもしれない。

当時小学生だった僕と弟にとって、この想像は辛かった。

 

それから少し経ち、弟とこのことについて話したことがある。

結果「呼ばれたのかもしれないね」ということになった。

弟は弟で、ばあちゃん家に行きたい衝動に駆られていたらしい。

助けて欲しかったから呼ばれたのか、
看取って欲しかったからなのか、
寂しかったからか、はたまた道連れか。

それはさすがに分からないけど、ばあちゃんはそういうところがあったから。

 

ばあちゃんの葬儀の日、天候はひどく荒れた。

まるで、この世に未練を残し「コンチクショーーー!」と言わんばかり。

ばあちゃんらしい。

 

 

ふたつめ。わんこ。

僕が職業訓練を受けていたころ。

訓練のためひとり暮らしをしていたのだが、寮は冬季閉鎖となるため実家に帰ることになった(父母は離婚し、当時父はずっと不在。僕が帰ってくるというので、その時だけ実家に集った感じでした。今は実家すらありません)

そんな僕を、母、姉、おいめい、わんこが迎えた。
ありきたりな年末を過ごし、初詣に行くことになる。

僕は人混みが嫌いなので渋った。
結局最寄の小さい神社に行くことになったが、それでも早く帰りたかった。
寒いしね。

 

実家に戻り玄関を開けると、わんこがそこにいた。

目に飛び込む水たまり。失禁していた。
僕を見て、即奥に引っ込む。

父譲りの強硬派な僕(DVは無しだが)
きっちり叱らねばとわんこを追う。
(わんこが引っ込んだのは、僕の表情を見たからかもしれない)

 

リビングに行くと、わんこがこちらを見ている。

すぐに違和感を覚える。何か様子がおかしい。
なんというか、怯えたような・・・そんなに怖い顔だったかな、僕。

わんこに近づき撫でてみると、小刻みに震えている。

そしてすぐに気がついた。
わんこ、呼吸できてない!!!

頭が真っ白になった。

 

反射的に母に「タウンページ探して!」姉に「動物病院調べて、電話して」と指示

意識ある。で、呼吸が止まる、というのは・・・窒息。何か詰まらせた!?
わんこの口を掴んで開けさせる。手に牙が食い込む。

懐中電灯で覗き・・・ダメだ、何も見えない。

 

みるみるうちに弱って行くわんこ。
もう意識を失う寸前だ。

姉の電話がヒットするが、姉はオロオロしている。
電話をひったくり、深夜であることを謝り、すぐ状況説明。

意識はあった。呼吸がない。窒息しているかもしれない。
背中は叩いたがダメだ。もう意識がなさそうだ。犬に対するハイムリック法のようなものはないのか?なんとかする方法はないのか?

迷惑を顧みずに、矢継ぎに質問した。

 

良い迷惑だったろう。
獣医師からの返答は実に冷静で、背筋が凍るようなことだった。

電話は切られた。
なんとかするしかない。
けど、なんとかできるのか?

母には掃除機を持ち出してもらう。
が、スキマノズルを紛失していたためホースの直径が太く、使えなかった。

わんこが痙攣を始めた。猶予はない。

 

さっきまで開こうとしていた口を、今度は閉じる。
両手でがっちりとじ込み、首をそらせ鼻先にかぶりつく。
確か、犬の人工呼吸はこうしたはずだ。
(※犬の鼻は想像以上に汚染されているので真似をすべきではありません。下手すれば感染症にかかりますよ)

ただ、そんな生半可な知識では如何にもならない。
少しも空気が入って行く感触がなかった。

それでも、こちらもうろ覚えの心臓マッサージとともに、交互に、何度も試みる。

なん分経ったろう。

ついに、わんこの痙攣が止まった。

 

わんこ、まだ生きているのか?
もう、ここにはいないのか?

それはわからない。それでも、

「まだ、生きているうちに、撫でてあげたほうがいい」

母、姉、おいめいに、そう告げた。

おずおずと近づき、手を伸ばし、頭、体、尻尾、脚をそれぞれ撫でる。

僕は口の周りをベドベドなのをそのまま、まだ口に手を添えていた。

 

不意にわんこの体が脱力するのが見えた。

先ほどまで口に収まっていた舌が弛緩し、だらんと垂れた。
それが僕の手の中に落ち、僕はそれと同時に指の間を魂がすり抜けていったのだと感じた。

助けたかった。
せめて、安心させてあげたかった。

最後に見せた飼い主の表情が責めるようなものであったことを、心から申し訳なく思う。

僕はわんこを抱え上げた。怯えきった表情が脳裏に浮かぶ。
ソファの、いつもの定位置に、いつもの格好になるように寝かせた。

こうしてみると、ただ寝ているみたいだ。
さっきまであんなに苦しそうだったのに。

まるで、いつものように筆頭飼い主である父を待っているかのようだった。

 

落ち着いた頃には朝になっていた。
僕を残して、それぞれがそれぞれの家に帰っていった。

小学校に上がる直前の甥っ子は、すぐに事態を把握して泣いた。
まだ3歳だった姪っ子は、帰りの車の中で急に理解し泣いたという。

僕はまた誰もいなくなった実家で、その後数日間かつてない腹痛と嘔吐に苛まれた。